棟 (むね)
播州祭り屋台の屋根は、神輿屋根と布団屋根の二種類に区分されます。構の屋台は神輿屋根型屋台で、姫路市で見られる屋台の殆どはこの種類です。神輿屋根型屋台には屋根の各面に紋が取り付けられます。又、屋根の曲線のことを「てりむくり」といい、この曲線の深さが地区によって微妙に異なりそれぞれの屋台の特徴となっています。屋根の四隅に取り付けられる部材のを「昇総才」といい、下部の外側周囲を「水切」といいます。「水切」は屋根の四方で反り上がった独特の形をしています。屋根の軒下には「繁垂木」があり、構をはじめ姫路市南東部に分布する屋台では二軒になっており、姫路市の西部の網干方面では三軒垂木が一般的となっています。
昇総才 (のぼりそうさい・のぼりそうさ)
神輿屋根型屋台の屋根の四隅に取り付けられる部材。通常昇総才には、飛龍や鷹をはじめ虎・鳳凰・鶴・麒麟などの神獣や善獣が昇金具として配されます。その装飾には、地金具を隙間無く取り付けた「総打ち」と、地金具に透き間を空けて、下地の漆が見えるようにした「箱形」の二種類があります。かつては、箱型が一般的であったようですが、時代と共に錺金具の装飾性が発展し「総打ち」が多くなってきました。現在新調される屋台では原点回帰の風潮もあって、「箱形」に戻す地区も増えています。構は「総打ち」で龍と波が配されています。錺金具の制作は、竹内雅泉氏によるものです。 |
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総才端 (そうさいばな・そうさばな)
総才端は、昇総才の先端部分に取り付けられる錺金具のことで、昇総才の木口装飾として発展しました。総才端は、屋根の四つ角に取り付けられることや、その形状が剣形になっていることから四方を守護するといった思想が誕生しています。又、皇室系の神社(八幡宮など)では擬宝珠・総才端・鏡をそれぞれ玉・剣・鏡として三種の神器と見立てている所もあるようです。総才端の左右には飛龍や鷹などの置物金具が取り付けられ、正面の木口部分には鏡面があります。鏡面には龍や鯉の滝登り神社名や町名が配されます。構の鏡面には以前「天満宮」が付けられていましたが、現在は昇り龍になっています。
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水切金具 (みずきりかなぐ)
屋根の下部、水切に取り付けられた金具を水切金具といいます。水切金具はスペース的に細長いので、その構図を生かして龍を配したものが最も多く、その他には龍と虎や鷹を組合わせた構図や、退治物など人物ものを配した構図、珍しいところでは一富士二鷹三茄子などの構図を目にすることが出来ます。水切の地金具は透かし彫りで製作され、その上に、龍や人物などの置物が取り付けられています。
構屋台の水切金具は、二頭の龍が宝珠に向き合う「龍の珠取り」になっており、右側の龍が「阿」で尾に剣を持ち、左側の龍は「吽」となっています。
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垂木 (たるき)
棟の軒下には垂木があります。屋台の垂木は通常二軒(ふたのき)か三軒(みのき)が一般的で、構をはじめ姫路市南東部に分布する屋台では二軒、姫路市西部の網干方面や御津町方面では三軒垂木が多く見られます。 上段の垂木を飛檐垂木、下段の垂木を地垂木といい、隅木と木負の接点から出ている飛檐垂木を論治垂木といいます。構の屋台では、一面における飛檐垂木の総数は35本、地垂木の総数は29本で、論治垂木は隅木から四本目になっています。垂木端の紋は、飛檐垂木・地垂木共に珊瑚細工による「梅鉢」で、透かし彫りはそれぞれ「梅」・「松」です。
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斗組 (とぐみ・ますぐみ)
斗組は木組によって製作され、それぞれの部材に力を分散させる事により屋台に伝わる衝撃を緩和させる働きがあります。斗組の材質は檜材か欅材が一般的ですが、中には黒檀で造られている地区もあります。 |
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正角・粧隅 (しょうすみ)
正角(粧隅)とは、斗組の外側に取り付けた彫刻のことをいいます。四隅を守護するという考えから、力強い龍や虎、バク、唐獅子に牡丹、力神などが配され、通常左右の組み合わせが「阿吽」になっています。屋台によっては、唐獅子の持つ鞠などが精巧な籠彫りで仕上げられているところもあります。正角彫刻は屋台の漆塗りと同時に金箔押しが施されるのが一般的です。構屋台の正角彫刻は飛龍です。 |
井筒 (いづつ)
四本柱の上部に組まれ、狭間の下にある部材のことをいい、上から見ると「井」形に見えることから井筒と呼ばれます。四本柱と斗組を固定する役割があり、斗組と共に、屋根の重量と四本柱の衝撃荷重を受けるところでもあります。井筒の材質は欅などの堅い木材が使用され、その上部には台輪と呼ばれる薄い板の部材が取り付けられます。又、幕を掛けるための幕掛けも井筒に取り付けられ、ほとんどの屋台では井筒部分に装飾の錺金具が施されています。構屋台の錺金具は「近江八景」「安倍泰成の九尾の狐退治」「平清盛の日招き」です。
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井筒端 (いづつばな)
井筒端は、井筒の組み合わされた部分より外に突き出た木口の部分をいいます。1つの角に2ヶ所あり全部で8ヶ所あります。井筒端には、錺金具で神紋や人物もの、神獣が配されます。社寺建築では、虹梁、頭貫に該当し、柱の外側には拳鼻や木鼻といった彫刻が施されています。構屋台の錺金具には「梅鉢」・「唐獅子」が配されています。
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四本柱 (しほんばしら)
四本柱とは、屋台の屋根を支えるための四本の柱のことで、神輿屋根型屋台では丸材が一般的です。材質は屋台の重みや泥台からの衝撃、太鼓の荷重などに耐えられるよう欅材が使用されます。
弦の綱・締め綱 (げんのつな・しめづな)
弦の綱は締め綱ともいい、屋台の棟を固定するために、隅木の下から泥台を引っ張るロープのことで、通常強度のある太い麻縄が用いられ、中間に取り付けたターンバックルで締め上げます。屋台の棟、斗組、井筒は四本柱の上に載せているだけなので、弦の綱が無ければ屋台が転倒すると屋根が外れてしまいます。
四本柱受け (しほんばしらうけ)
四本柱受けとは、 泥台から四本柱を支えるために、泥台の下貫四隅に取り付けられた部材のことをいいます。屋台の荷重が直接かかる部分でもあり、強度のある欅材や松材が用いられます。
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高欄 (こうらん)
高欄とは泥台の上にあり、乗子(太鼓打ち)が太鼓を叩くために座る囲いのことで、欄干ともいいます。神輿屋根型屋台では、高欄四隅の柱に擬宝珠を取り付けた「擬宝珠高欄」になっており、 姫路市南東部の屋台では一般的に高欄掛を取り付けるため錺金具は、高欄の四隅の欄縁に配されています。高欄に使われる材質は檜材で作ったものに漆を塗ったものが最も多く、地区によっては欅材や黒檀・紫檀で作られたものもあります。構屋台の高欄は檜材に漆塗りです。
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本棒 (ほんぼう)
本棒、脇棒、閂(かんぬき)とは、練り子が屋台を練るために担ぐ棒のことで、これらを総じて担き棒といいます。神輿屋根型屋台の担き棒は、檜の角材で造られ、練り子の肩に当たる担き棒の下面は、練り子の肩当たりを考慮して曲面にしています。屋台中央にある太くて長い2本の担き棒を本棒、本棒の外側にあるやや短い棒を脇棒といい、本棒の間に取り付けられた桟は閂(かんぬき)と呼ばれています。担き棒は、練り合わせを行う屋台では、激しい練りにも耐えられるような造りになっています。屋台の担き棒は、屋台の種類や地域によってその造りが異なり、網干型屋台では、チョーサ練りの関係で杉材を用い、屋台の差し上げに合わせて担き棒がしなるようになっています。網干型屋台では本棒のことを内棒、脇棒のことを外棒ともいい、担き棒の長さが四本ともほぼ同じで、練り子の配置も、本棒の練り子が内側から肩を入れ、チョーサ練りの際は、本棒と脇棒の練り子がお互い向き合う体勢になるため閂は省略されています。
浜の宮天満宮の屋台では、台場差しを受けるため角材を丸に加工した檜材が使用され、台場差しの際は閂を取り外して行います。 |
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脇棒 (わきぼう)
脇棒は、本棒の外側にある短めの担き棒のことをいい、屋台が左右に倒れようとする力を支える役割があります。脇棒は、泥台に固定された脇棒受けで支えられており、練り合わせの際は、お互いの屋台の脇棒同士を合わせることになります。したがって激しい当たりで折れてしまうこともあり、多くの地区では予備の脇棒を準備しています。練り合わせになると、脇棒の練り子は内側に入り、本棒寄りの方から担ぐことになります。又、脇棒と本棒の長さの差によってできたスペースに棒端が入り練子に指示を送ります。 |
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脇棒受け (わきぼううけ)
脇棒受けとは、脇棒を支えている部材のことです。脇棒受けは泥台に固定されており、脇棒を支えるだけではなく屋台が倒れた際には脇棒の練り子が地面に挟まれないように、脇棒が地面に接触する前に屋台の傾きを止める役割もあります。また、脇棒受けは激しい練り合わせの衝撃をまともに受ける箇所でもあり、堅牢な造りになっていると同時に美しい彫刻が施される場合も多く、丸棒の屋台では龍や獅子が脇棒を咬んでいるデザインになっているものもあります。又、昨今では細い路地の町内運行と練り合わせの練りとを両立させるために、金具を使って脇棒をスライドさせ本棒と脇棒の間隔を変えられる構造になっている屋台もあります。 |
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閂 (かんぬき)
本棒と本棒の間にある桟を閂といい、通常前後に各3本ずつあります。屋台練りは、本棒の間にある閂を練る練子が均等に力を発揮することによって安定した練りが出来るといわれています。より安定した練りをするため前後の最も外側の閂には背が高く体格の良い練こを配する事が多く他の2本よりも取り付け位置がやや高くなっている屋台も多く見られます。
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棒端鐶 (ぼうばなかん)
本棒先端に取り付ける棒端綱を通す鐶を棒端鐶といいます。棒端綱とは、屋台の進行方向を定めたり、振れを抑えたりする舵取りに用いる綱のことで、構では毎年祭りの準備期間中に有志の手によって製作されます。又、この綱を持つ者を「棒端」(棒鼻と書く地区もあります)といい、体格の良い屈強な者がこの任に就きます。本棒・脇棒とも先端の金具は、木口の割れを防止する役割があります。 |
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泥台 (どろだい)
泥台とは、屋台の足の部分をいい、台場とも呼ばれます。泥台には屋台の重量や、屋台練りの衝撃に持ち堪えるだけの強度が必要で、四本の脚柱の上下に貫を通し、鉄芯で補強しています。下貫には、四本柱を支える四本柱受けが取り付けられ、本棒は脚柱上部のほぞに取り付けられ、その上に高欄が載せられます。又、恵美酒宮や浜の宮の屋台は台場練りや台場差しを行うため下貫の先端が外に延ばされ、そこを担ぐことが出来る構造になっています。
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