北野天神縁起絵巻 |
(1) 天神縁起の系列 |
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絵巻とは、物語を詞(文章)と絵で綴って巻物にしたもので、縁起絵巻や物語絵巻があります。また、絵を明示して物語を説明する方法には、掛け軸、紙芝居、綴じ本などがあります。
北野天神縁起絵巻については、建久5 年(1194)以前に成立した文章に基づいて絵巻化したものです。
梅津次郎氏の説によると、北野天神縁起絵巻には甲乙丙の3 系統があるが、3類とも、詞・絵が輻輳しており、中には自社の縁起を加えたものもあるようです。
各類に属する主な絵巻には次のようなものがあります。
甲類 承久本 英賀永正本 メトロポリタン本 荏柄本 岩松宮本乙類 津田本 英賀明徳応永本 伊保庄本 光信本 光起本
丙類 弘安本 建治本 松崎本次に各類の代表的なものについて説明します。
甲類 「王城鎮守の神々」で始るものです。承久本(北野天満宮所蔵(国宝))最も古い13 世紀前半の作で、根本縁起となっています。縦52cm の大型ですが、絵巻は未完成のままです。
英賀永正本 3 巻 姫路市飾磨区英賀宮町 英賀神社所蔵
奥書が永正4 年(1507)で、永禄7 年(1564)に奉納されています。詞26 段と絵25 段ですが、上巻・中巻の絵と下巻の絵(幼稚)
の技が異りなります。
乙類 「日本我朝は神明の御恵み」で始ります。
乙類は、さらに2 種に分類されて、その第一種は当社の津田本が代表です。 |
第一種 |
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津田本は、永仁6 年(1298)に奉納されています。
詞は甲類の系統で、絵は承久本を簡略化したうえに、弘安本を簡略化して取り込んであります。
簡略な画面構成や線画を主軸とした控えめな彩色、地方絵師の作と思われます。
英賀明徳応永本は姫路市飾磨区英賀宮町英賀神社の所蔵です。
明徳2 年(1391)から応永2 年(1395)の作で、3 巻ですが現存は詞15 段と絵6 段のみで、残念ながら他は欠落しています。
詞、絵とも上巻と下巻は津田本に、中巻は弘安本によるようです。3 巻とも在地性の特色があります。
伊保庄本(東京出光美術館蔵)は応永10 年(1403)の作で、高砂市の伊保庄社に奉納された絵巻です。
津田本の影響をうけています。常盤山本 南北朝時代の作です。
第二種 津田本に3 種の詞と絵が入ったもので、絵は丙類によります。光信本 土佐光信の絵画で独自性を発揮しています。
光起本 弘安本を忠実に踏襲した土佐光起の作品です。
丙類 「漢家本朝霊厳不思議」で始まります。天神が、王城鎮守から儒神、あるいは官位栄達をかなえる神に変化
しております。観音信仰により33 段で構成され、南北朝から室町時代にかけて地方へ広がったものです。
弘安本 健治本 松崎本 正嘉本(詞のみ)があります。
丁類 太政威徳天縁起絵巻が、フランス・ギメ国立東洋美術館に所蔵さ
れています。 |
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